王様と呼ばれたストライカー
ピーター・オズグッドは1947年、バークシャー州ウィンザー近郊のクルーで生まれました。1964年にチェルシーのトップチームでデビューすると、その優雅なプレーと得点力で瞬く間にファンの心を掴みます。チェルシーでは通算約440試合に出場し、134ゴールを記録。1969-70年のFAカップ優勝や1971年の欧州カップウィナーズカップ制覇に貢献し、“スタンフォード・ブリッジの王様”と称されました。
1974年にサウサンプトンへ移籍後も、1976年FAカップ制覇を経験。晩年にはアメリカのフィラデルフィア・フューリーにも在籍し、最後は再びチェルシーに戻って引退しました。イングランド代表としても4キャップを記録し、1970年のメキシコW杯に出場しました。
パブでのもう一つの顔
オズグッドは引退後、かつての同僚イアン・ハッチンソンと共にウィンザーのパブ「ユニオン・イン(Union Inn)」を経営しました。ファンや地元民が気軽に足を運べる場所で、試合後や休日には彼自身がカウンターに立ち、訪れる人々と笑顔で語り合いました。
また2003年にはウィンザーの別のパブ「ザ・デューク・オブ・エディンバラ」で、自伝のサイン会イベントが行われ、多くのファンが集まり熱気に包まれました。そこには華やかなスタジアムとは別の、肩の力を抜いた“地元のオズグッド”の姿がありました。
プレースタイルと人物像
オズグッドは長身ながら柔らかなボールタッチを誇り、エlegantなストライカーと呼ばれました。テクニックと決定力を兼ね備え、どんな試合でも得点を狙える勝負強さを持っていました。1970年のFAカップでは全ラウンドで得点するという稀有な記録を残しています。
ピッチ外ではユーモアと親しみやすさに溢れ、パブでの振る舞いはその人柄を象徴しています。地元に根ざし、ファンと同じ目線に立つことで、彼は単なるクラブの英雄を超えた存在になったのです。
王様が帰る場所はパブだった
ピーター・オズグッドのキャリアは栄光に彩られていますが、彼が人々に深く愛された理由は“王様でありながら地元の仲間でもあった”ことでした。パブという庶民的な場に立つオズグッドの姿は、フットボールがコミュニティに根ざした文化であることを証明するものです。
スタジアムの歓声とパブの笑い声――その両方を支配した稀有な王様。
それがピーター・オズグッドでした。